最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか
最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか、河本薫、日経BP社を読了した。
著者は長年大阪ガスで社内のデータ分析組織を率いた方であり、その経験から企業でデータ分析を活用するために大切なことを説明している。大阪ガスでは独自のデータ分析組織が社内部署のデータ活用をコンサルティングする形がとられている。
組織に貢献するために必要なものとして、最低限の統計やITの知識に加えて、本書の中ではデータ活用したい部署への必要十分な説明・議論、現場で使ってもらうための努力・使命感が重要としている。
コンサルティング部隊が知識・解析結果を提供するだけでは上手くいかず、当事者意識が重要であると理解した。
ガス会社の分析組織は、保険会社や製薬会社のそれとはことなり、具体的な期待がないことが特徴であるとのことである。ガス会社に限らずプラントエンジニアリング会社を含む多くの企業も同じであろう。その分、予算獲得や説明に苦労することが多くなると思われる。一方、データ分析の「こんな使い方があったのか」ということを見つけることが求められるといえ、社外の活用事例に捉われることなく独自の方法論を見つけることに注力する姿勢が大事であると思う。
最後に、著者の分析組織のリーダーであった経験から、リーダーとして組織を動かす上で意識するべきことが記載されている。部下の説明を即座に理解する専門知識は必要であるが、人を動かす能力が強く求められるとのこと。
これはデータ分析組織以外でも当てはまると思われる。会社の中では、過去にプレイヤーとして活躍した人が管理職につく場合が多いと思われるが、その人が管理職になった後、無私の姿勢で部下のサポートに注力できるとは限らない。プレイヤーとしては二番手以下であった人が管理職として適切であるということは当然あるだろう。
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天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い
天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い、中村 哲、NHK出版を読了した。
中村哲さんのご冥福をお祈りいたします。
正直なところ、この度の訃報のニュースで中村さんのことを知った。
中村さんがこれまで成し遂げてきたことに頭が下がるとともに、なぜ自分の故郷ではない国でそこまでできたのかということが気になり本書を読み始めた次第である。
この点について、中村さんは本書の中で、
よく誤解されるように、強固な信念や高邁な思想があったわけではない。
と述べている。
生まれてからの数々の出会いの積み重ねの結果としてアフガニスタンやパキスタンの現地に行き着いたとのことである。
本書を読んでいると中村さんの超えてきた困難の大きさが感じられ、自分の言葉で表現することが躊躇われるほどだが、目の前の困った人に誠実に対応され続けてきたのは間違いないはずである。
中村さんのように無私な仕事ができる人は滅多にいないだろう。私などは普段生活していく中で、どうしても利己的な行動をしてしまうことがある。その度に少し自己嫌悪に陥るのであるが、完全に無私になることが難しいと感じてしまう。無私の精神で仕事ができるようになることが人間として成長することと言えるのではないかと思った。
日本のような安全な国に住んでニュースを見ているのでは本当に起きていることは分からない。
アフガニスタンでの紛争について、本書では米国による理不尽な空襲や、日本の見当違いな復興支援について書かれている。
現場から離れた場所でなされた意思決定が返って現場へ混乱させてしまうこと、ニュースの情報は利己的な都合によってバイアスがかかっていることを認識させられた。そんな中、自らができることを貫いた中村さんに畏敬の念を覚える。
人間が技術を進歩させていく中で間と自然の距離が遠くなっている。人間全体が技術を過信し、お金さえあれば何でも解決できると思ってしまっている傾向にあると確かにあると思う。そのことが新たな悩みや問題を生み出している。
「経済成長」「技術文明」の追求が本当に人類を豊かにするのかどうか考えさせられる本であった。
「コンビニで年賀状2020」を使った感想
「コンビニで年賀状2020」サービスを使ってみた。
cvs.net-nengajo.jp
スマホアプリで年賀状のデザインを決め、コンビニ(セブンイレブン)のプリンターで印刷ができる。セブンイレブンで年賀はがきを購入できるため、買ったハガキをその店舗で印刷して帰ることが可能である。
(別のサービスとして、ネット注文により印刷された年賀状が配達されるサービスもあるが、配達に数日かかるため、来た人にだけ返すスタイルの人には合わない。投函代行サービスもあるが、手書きで一言書きたいという希望もある。)
昨今、年賀状は自分からは出さないが人から届いたら返すスタンスの人も多いと思う(自分もそうだ)。自宅にプリンターがない場合でも必要な分だけ印刷できるため、便利なサービスであると思う。
年賀状のデザインも、豊富なテンプレートに加えて、スタンプや文字の挿入などによりオリジナリティを出せる。ただのテンプレートだと思われることもないだろう。
一方、気になった点を以下に述べる。
これらの点が改善されれば、より使いやすいサービスになると思う。
・ プリンターが多機能すぎて、必要な操作がわかりづらい。
本サービスでは「ネットプリント」を使うが、他に「はがきプリント」などがあり、私は一度こちらを選択してしまった。
・ 住所・宛名を印刷できない。
本サービスで印刷できるのはデザイン面(はがきの裏)のみであり、住所・宛名面(はがきの表)を印刷できない。私の場合、はがきの枚数が10枚以下であったたため、手書きで住所などを書く方針としたが、数十枚ある場合は中々しんどいだろう。
・ 年賀はがきを自分でプリンターにセットする必要がある。
年賀状は普通のはがきではなく、年賀はがきを使うのが普通だろう。セブンイレブンのプリンターは「はがきプリント」機能もあるため、通常は普通のはがき(備え付けはがき)がセットされている。年賀はがきをセットするには自分で用紙トレーを開けて持参したはがきをセットする必要がある。タッチパネルに操作の説明が表示されたり、備え付けはがきを一時的に置くスペースが確保されていたり考慮はされているが、コンビニのプリンターの用紙トレーを開けることに抵抗を感じる人は少なくないだろう。
・プリンターでお札が使えない。
今回予備も含めて15枚印刷し、合計金額が1000円を超えた。プリンターの支払いは硬貨かnanacoのみであり、店員さんに両替をしてもらった。nanacoを持っていれば便利かもしれない。
以上、「コンビニで年賀状2020」を使った感想であった。
年賀状を出す人が減っている中、結婚や子供が生まれたタイミングで年賀状を出す人もおり、それを受け取ると嬉しい気持ちになる。自分に送ってくれた人への感謝の気持ちを示すためにも、届いた年賀状には返すようにしたいと思う。
誰が科学を殺すのか
誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃、毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班 著、毎日新聞出版を読了した。
- 作者:毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2019/10/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
ものづくりで台頭し世界第二位の経済大国となった日本であるが、科学技術分野において米国、中国に大きく引き離されて衰退しており、大学をはじめとする研究現場が疲弊しているという内容である。
修士課程学生の時に研究費について悩むことはなかったが、大学教員がお金をとってくることに苦労しており研究する時間が中々とれないという話は聞いていたし、実際に教授・准教授・助教授を見ていてそう思った。(私が所属していた研究室の先生方は自分で獲得した研究費で学生を数か月海外に滞在させてくれた。とても良い経験であり、大変感謝している。)
本書を読むと大学の研究費について分かりやすく書いてある。国立大学では国から支給される運営費交付金に加えて、教員が応募する科研費などの外部資金がある。しかし、2004年の国立大学法人化に伴い運営費交付金が毎年減っており、教員一人あたりは年に数十万円程度しか受け取れていない。そこから研究費の光熱費や印刷代なども支出されるとのことで、学生を現地調査に向かわせることが中々できないのも納得である。
特に地方国立大学では研究費が少なく、地域の産業に科学技術の知見を役立てようにもカネがネックになっているとのことであった。
科学技術の予算を決める財務省としては、合計の支出額が増えていることと、国民の税金で研究をしているからには結果を出すべきだという理由から大学側の改善を求めている。国民の税金にも限りがあり科学研究費を増やすには国民に説明できる結果が必要という言い分も分かるが、研究にはやってみないと分からないという側面が大いにあると思う。現在はお金がなく”やってみる”ことすらできない状況なのではないか。
研究者たちは技術をベースにしたベンチャーを立ち上げるなどしており、自ら研究費を稼ごうと奮闘している。
日本の科学技術政策がトップダウンの仕組みになっており、科学技術による経済発展を目的とした巨大プロジェクトに大きな予算がついている。SIP、ImPACT、ムーンショットといった研究開発事業がある。このような応用研究にお金が集まり、基礎研究にお金がつかないという現状が問題視されており、基礎研究にお金をかけるべきということを多くのノーベル賞受賞者が訴えている。
イノベーションは、何に役に立つか分からないが研究者が好奇心を追求していった結果として偶然生まれたという歴史がある。「選択と集中」は予め求められている結果を短期間で求めている点でイノベーションの歴史と逆行している、という指摘がある。私もこの指摘に賛成である。人類が科学技術を駆使していく中で、お金をかけて研究すれば人類が自然を支配できると過信してしまっているのではないか。
ポスドクなど任期付きの研究者が経済的に不安定であるという問題にも述べられている。私は修士課程で企業に就職したが、博士課程への進学も選択肢のひとつにあった。博士課程への進学をしなかった理由のひとつとして、すでに奨学金で生活していたこともあり、研究者というキャリアの経済的不安定さに不安があったことも正直ある。
「誰が科学を殺すのか」という問題は、研究をする側(大学・研究所)と管理や予算を決める側(国・経営)の人々の経験・価値観が異なることが根底にあるのではないかと思う。議論をかさねているようで全く噛み合っていないのではないか。(規模は違えど、企業の中の他部署間でも似たような問題はある笑)本書を読んでいると日本の将来に不安ばかりが募ってくるが、研究者の自らお金を稼ぎにいくという動きを応援したいし、自分も技術者として出来ることを考えたい。
仕事は楽しいかね?
「仕事は楽しいかね?」 デイル・ドーテン 著、野津智子 訳、 きこ書房 を読了した。
吹雪で閉鎖された空港という場面で、マックスというおじさんが人生について説いてくれるというストーリーである。おじさんは明確な人生の目標や夢を決めることに否定している。
私自身、人生の目標や夢を決めるために色々考えていたが、すっきり腑に落ちるものを見つからなかったり、見つかったとしても数日後には自己矛盾に陥ってしまったりしていた。
本書では過去の成功者は偶然により生まれていることを例にあげて、人生を管理することよりも色々試してみることを推奨している。
私はプラントエンジニアとして働いているが、自分で専門書や技術書を買って数学・工学・プログラミングについて独学するのが好きである。幅広い独学は色々試してみることと似たようなことであると思う。
それらの独学した内容が会社での業務で活きてくることも少なくない。本書の内容は自分のやっていることが間違っていないことを言ってくれているような気がして嬉しい。
ここ数年は年始に目標を手帳に書くことを習慣にしていたが、”目標” ではなく ”試したいこと” を書いてみるのも良いかもしれない。
成功者には先のことを考えず、目の前の問題をなんとか解決しようした結果、思いもよらなかったところでその経験が生きていることが多いらしい。もちろん、成功には努力が必要であり、成功者は自分の問題を解くことに対して努力していた。
(このことは「小商いのすすめ」で ”「小さな」問題 ”として述べられていたことに通ずると感じた。)
reliableeng.hatenablog.com
独学もそれにあたるのだと思う。今の様々な独学が、新しいアイデアや仕事につながることを期待したい。
本書の中でおじさんの唯一の目標として書かれている、
明日は今日と違う自分になる
は、私の今後のキーワードにしたい。
トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ
最近体重の増加が気になり、以下の本を買ってみた。
- 作者: ジェイソン・ファン,多賀谷正子
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2019/01/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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様々なダイエット法が次々と提唱される一方で、多くの人はダイエットに失敗しているのはなぜか。
著者は従来のカロリー理論(摂取するカロリーが消費するカロリーより小さければよい)を否定している。
Amazonのレビューを見ると分かるが、賛否両論あるようである。本書の中では多くのエビデンスを紹介しており、著者の主張が論理的かどうかを読者の頭で考えられる内容となっていると思う。
近年肥満の人が増えているのは、現代社会では美味な食べ物が手軽に手に入るようになったことが背景にあるとしている。
私自身の傾向として、体重が増えていなかった学生の頃に比べて、今は間食(特に夕飯後)が多く、食べている時間が長かったと感じている。
間食をすると太るというのは当たり前のことであるが、科学的な説明のもとで理解すると個人的には行動にも移しやすい(と思う)。
本書では太らないカラダを作るために避けるべき食べ物を説明している。
食品会社が美味で手軽で長期間腐らない食べ物を安く提供できる理由については考えさせられた。
特に果糖ブドウ糖液糖には気を付けたい。果糖ブドウ糖液糖については以下の本でも警告されていた。
- 作者: 安部司
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 単行本
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何を食べたら健康でいられるのか?という問いは検証が難しい。24時間見張ってすべての行動のログをとることは不可能に近いし、遺伝的なものも含めた条件を揃えることはできない。健康に良いものばかり食べていても病気になる確率は0%にはならないだろう。
ただ、自分が人生でやりたいことをする上で健康というのは大事なファクターであり、それを維持できるのもスキルの一つであると思う。
本書を読んで、自分が口にするものについて深く考える良いきっかけとなった。
運動の効果については減量のためというより、ストレス解消ために有効であるとの意見が示されおり、いやいやスポーツジムに通うよりも好きなスポーツをするなどの方が有効かもしれないと感じている。
また、本書の最後に提案されている断食(ファスティング)を提案している。
朝・昼ごはんを抜いて24時間断食するのを週2,3回行う程度であれば実行可能かもしれないと思った。
特に仕事中で会社にいればお菓子に手を出してしまうリスクも少ない。
まずは、プチ断食にチャレンジしつつ、以下に注意して2020年までにどれだけ体重を落とせるかについてやってみたい。
・ 食べていない時間を増やす。お菓子を食べたいときは、夕食直後に少しだけ食べる。
・ 自炊を増やすなど、人工的な処理がされた食べ物を極力さける。