JPのブログ

読書記録や勉強したことをまとめていきます。

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い、中村 哲、NHK出版を読了した。
中村哲さんのご冥福をお祈りいたします。

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

  • 作者:中村 哲
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2013/10/24
  • メディア: 単行本

正直なところ、この度の訃報のニュースで中村さんのことを知った。
中村さんがこれまで成し遂げてきたことに頭が下がるとともに、なぜ自分の故郷ではない国でそこまでできたのかということが気になり本書を読み始めた次第である。

この点について、中村さんは本書の中で、

よく誤解されるように、強固な信念や高邁な思想があったわけではない。

と述べている。
生まれてからの数々の出会いの積み重ねの結果としてアフガニスタンパキスタンの現地に行き着いたとのことである。
本書を読んでいると中村さんの超えてきた困難の大きさが感じられ、自分の言葉で表現することが躊躇われるほどだが、目の前の困った人に誠実に対応され続けてきたのは間違いないはずである。

中村さんのように無私な仕事ができる人は滅多にいないだろう。私などは普段生活していく中で、どうしても利己的な行動をしてしまうことがある。その度に少し自己嫌悪に陥るのであるが、完全に無私になることが難しいと感じてしまう。無私の精神で仕事ができるようになることが人間として成長することと言えるのではないかと思った。


日本のような安全な国に住んでニュースを見ているのでは本当に起きていることは分からない。
アフガニスタンでの紛争について、本書では米国による理不尽な空襲や、日本の見当違いな復興支援について書かれている。
現場から離れた場所でなされた意思決定が返って現場へ混乱させてしまうこと、ニュースの情報は利己的な都合によってバイアスがかかっていることを認識させられた。そんな中、自らができることを貫いた中村さんに畏敬の念を覚える。


人間が技術を進歩させていく中で間と自然の距離が遠くなっている。人間全体が技術を過信し、お金さえあれば何でも解決できると思ってしまっている傾向にあると確かにあると思う。そのことが新たな悩みや問題を生み出している。

「経済成長」「技術文明」の追求が本当に人類を豊かにするのかどうか考えさせられる本であった。