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小商いのすすめ

小商いのすすめ、平川克美 著、ミシマ社 を読了した。

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

内容

敗戦後から1964年の東京オリンピックまでの期間、貧しいながら幸福感があった。そこから日本人は大いに働き、高度経済成長を経て経済大国となった。

短期間で経済成長できた理由の一つとして、経済が均衡拡大する状況にあったことになる。例えば、各家庭に3C(車、クーラー、カラーテレビ)が行き渡る過程であり、仕事が増える⇒収入が増える⇒3Cが買える⇒仕事が増える、といった経済が拡大する方向に均衡している状況であった。

しかし、現在(本書が執筆されたのは2011年)では各家庭には3Cなどの消費財は行き渡っており、経済成長には難しい環境にある。それにも関わらず、経済成長を前提として、資本主義社会が進んでいる。テレビが一家に一台の時代から、一人一台の時代になるなどして、少しずつ経済成長が見られるものの、停滞していくことは目に見えている。

著者は、人口減少を背景に、今後の経済を縮小均衡していくことを提案している。また東京オリンピック前に見られた情景をヒントに、小商いをすすめている。

端的に、小商いは、存続し続けることが、拡大することに優先するような商いのことです。

大きな利潤を必要としないスケールのビジネスをし、
・送り手と受け手の関係が継続していくこと
・送り手が自分の仕事に意味や必要性を感じること
を重要と考える。

感想

本書に記載されていた企業の他にも、地方で見られるゲストハウスや再生可能エネルギーベンチャーなどが小商いの実例だと思う。いずれも地域の中の小さなコミュニティを大事にしていることが共通点だと気づいた。

小商いが浸透すると生活水準は下がる(不便になる)、技術開発は他国から遅れをとる等の懸念があると思われるが、人々が助け合って生活する中で、精神面では裕福になれるのかもしれない。

p.133

「大きな」問題のとは上述の「ちいさな」問題が積み重ねられた結果であり、「大きな」問題の解決は、無数の「ちいさな」問題を自分の問題として引き受ける、無数のちいさなひとびとが地道な努力を重ねることによってのみ成しうるのだとわたしは考えているのです。

大企業が抱えている問題は一人では解決できない。自分の周りの小さな問題を解決することで大きな問題が解決できるのだと思う。また、この考え方は「青年の大成」安岡正篤の中で述べられている「一燈照隅・萬燈遍照」に通ずると感じた。