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読書記録や勉強したことをまとめていきます。

バカの壁

バカの壁養老孟司 著、新潮社を読了した。

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)

 

 内容

バカの壁”の例として、「自分たちは知っている」と思い込み、自主的に情報を遮断してしまうことがある。

現代は情報化社会、脳化社会であり、実際には日々刻々と変化している生き物である自分自身が「情報」と化してしまっている状態である。

脳化社会では自分には変わらない特性があると思い込み、自分は不変で情報が変化すると考える。実際は逆で、情報が不変で自分が変化するのである。

例えば、死を意識すると同じ桜の木でも見方が変わってくる。これは自分が変わったからである。

 

脳化社会の弊害として、 思考停止となり大事なことを考えなくなる。一元論にはまるのである。

会社などの小さな共同体の中の常識(と思い込んでいるもの)を信じ込み、外のことが見えなくなるのが身近な例である。

 

一元論にはまり、壁に囲まれるのは一見楽であるが、向こう側のこと、自分と違う立場のことは見えなくなり、話が通じなくなる。

テロが起こることもオヤジの説教が子供に通じないことも、スケールは違えど、一元論にはまっていることに起因する。相手に対する係数がゼロになっているのである。

 感想

 p. 56

方丈記』の冒頭もまったく同じ。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」

川がある、それは情報だから同じだけど、川を構成している水は見るたびに変わっているじゃないか。「世の中にある、人と栖と、またかくのごとし」。

このような現代と異なる世界観が映し出されているとは感動した。中学か高校の授業ではただ丸暗記しただけであったが、学生時代の勉強に対する態度を反省するばかりである。

 

p.95

陽明学というのは何かと言えば、「知行合一」。すなわち、知ることと行うことが一致すべきだ、という考え方です。しかしこれは、「知ったことが出力されないと意味が無い」という意味だと思います。

勉強するときは、入力(インプット)だけでなく出力(アウトプット)を意識した方が良いとよく言われるが、それと同じようなことであると思う。

勉強したことをもとに出力、つまり行動できるようになることが目的である。

本書にイチロー松井秀喜などのスポーツ選手も出てくるが、スポーツ選手のように反射的に体を適切に動かせるのも、「こうしたらよい」という入力が反射的に出力できるように訓練されているからとも考えられる。

エンジニアとして流体力学や熱力学などの学問を学ぶときも、物理現象を前にして反射的に支配的な要因を見いだせることが重要なのだと思う。

 

p.109

人生の意味は自分だけで完結するものでなく、常に周囲の人、社会との関係から生まれる

本書で人生の意味を考える重要性を説明しており、常に意識したい点である。

 

p.160

よく言われることですが、サラリーマンになってしまっているわけです。サラリーマンというのは、給料の出所に忠実な人であって、仕事に忠実なのではない。職人というのは、仕事に忠実じゃないと食えない。自分の作る作品に対して責任をもたなくてはいけない。

事実、今じぶんは立場上サラリーマンなのであるが、仕事に忠実な人になりたい。人生の意味が分かっている人が仕事に忠実な人になれるのだと思う。