JPのブログ

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サピエンス全史

サピエンス全史 上・下, ユヴァル・ノア・ハラリ 著 柴田裕之 訳,河出書房新社を読了した.

我々ホモ・サピエンスが狩猟採集による生活を行っていた時代から現在にいたるまでの人類史を振り返り,未来について著者が考察している.

  • 人類は進化しており,人口が増えている一方,個々人の幸福度があがっているとは言えない.
  • 資本主義,帝国主義によって科学技術が発展して,暮らしが豊かになった.幼い子供の死亡率が下がった.人口が増えた.
  • その一方で,帝国に征服されて絶滅した動物や,故郷を奪われた先住民,子孫繁栄は果たしたが工業化された家畜の犠牲の上に今の生活がなりたっている.

など,様々なことを考えさせられた.


人類の歴史は長い(地球の歴史はもっと長い)が,科学革命により,生活に変化が生じたのは500年前からである.
科学は政治・経済と切ってもきれない関係であり,政治・経済から需要があるために科学に資金が供給され,科学の成果が政治・経済にフィードバックされる.
たとえば,エネルギーの枯渇が問題になれば,新しいエネルギーを発見するための研究にお金がつぎ込まれる.
逆に言えば,政治・経済にとって需要がなければ科学研究にお金は流れない.
イギリスはインドを植民地化する際に,現地の植物や歴史などを深く調べている.
つまり,自国の領土拡大という目的のもと,生物学や歴史学などの研究にお金がつぎ込まれた.

自分はこれまで
「科学者の多くは,純粋な知的好奇心から研究を行っている.
そして,大学等では幅広い分野の基礎研究が行われている.その全てが直接的に政治・経済の要求に応えるものではない.
現在は何に役立つか分からないものでも基礎研究結果が積み立てられ,結果的に政治・経済の要求に応えるものが出てくる...」
と考えていたが,実際はそうではないのかもしれない.
現在は人工知能などのデジタル技術の開発は政治・経済から求められており,そこにお金が投入されている.
優秀な科学者・技術者と十分な資金が集まることで,技術革新が起こり,我々の生活が変わる.
これまでの歴史がそうであったように今後もそうなっていくものなのかもしれない.

一方で,技術革新が我々の生活を便利にするのは明らかであるが,それによって我々が幸せに感じるかは別の話である.
同じ事象に対して,幸せに感じる人もいれば不幸に感じる人もおり,幸せの測定は非常に難しい
本書では,仏教の涅槃の考え方も紹介している.
苦しみは渇愛から生まれるものであるため,渇愛をなくすことで苦しむことがなくなる.
目の前の事象をありのままに受け入れることが渇愛をなくすための方法である.
この考え方をすることで,あれこれ考えてストレスを抱えることは少なくなりそうであるが,これは無欲で生きるということとは異なるのか?
情熱をもって何かを取り組む行動は渇愛を生み出しているのか??

個人的に結論は出ていないが,涅槃の考え方を持ちながら,何かに情熱をもって取り組みたいと思った次第である.
矛盾をかかえながら生きていくことが人間らしさ...ということに今はしておきたい.